作品案内03:モンマルトルのアヌビス The Fly swatter by Paul Spooner and Matt Smith 1989年の作品です。MOLENがコレクションしているこの作品はコベントガーデン/ロンドンにCMTがオートマタの常設館を所有していた時分にそこに展示してあったものです。 日本に到着したときは作品のいたみ具合が想定外で、交換部品を取り寄せて汚れもとり除き展覧会に出せるまでに復活させることができました。 作品のタイトルは「The fly swatter」ですから本来は「ハエをたたく人」とでもするべきなのでしょう。しかし、ストリーはこうなっています。 「パリ・モンマルトル地区でコンチネンタル・ブレックファーストを楽しむアヌビスに一匹のハエがつきまとってうるさいので、手にした白い手袋で引っ叩くのですがうまく当たらない」。 少々イライラしているアヌビス君の胸中がわかるよう気がします。それで邦題タイトルは「モンマルトルのアヌビス」といたしました。 ところでアヌビスですが、日本ではあまりなじみがなく展覧会では子供たちが彼のことを「クロウサギ」とか「クロキツネ」とよぶことが多いようです。実はアヌビス、かなり古くから私たち人間とかかわりがあります。何しろ古代エジプト時代の壁画に登場するくらいなのですから、掲載した壺の形をしたアヌビスもピラミッド発掘の際に見つかったものとされています。 ずいぶん前の話で恐縮ですが、下の写真は10年ほど前に大英博物館/ロンドンを訪れた際に撮影したものです。さて本題からは少し外れますが、この壺は何に使われていたかご存知でしょうか? 以前FBメイトにこのクイズを出題した際の答えはバラエティにとんだものでした。例えば「ワインを保管する」「たんなる飾り物」「儀式に使われていた」などなどです。 答えをご案内いたしましょう。ミイラづくりの際に、バディから取り出した内臓を収めるためのものだったようです。アヌビスの他に、猿(ヒヒ)、人(人間)、隼の合計4種類の壺があって、それぞれ肝臓、肺、胃、腸となかに入れる”種類”が決まっていたようです。*カノプス壺
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