西洋のオートマタと日本のからくり人形は、姿・形異なっていても、その動作は不思議と似ています。ゆるやかなワルツの調べに踊りだす男女のオートマタ、小さな茶碗をささげて歩みだす茶運び人形はともにスカートや袴の下に機構を隠しています。 また、それぞれの時代の先端技術を持つ人々によって作られた優れた人形たちが、揃って時代の権力者たちに愛玩されていた点も共通するところです。
しかし、異なる点もあります。機構の材料が西洋のオートマタは金属で、日本のそれは木製です。そのためオートマタの動力は金属製ゼンマイですが、日本のからくり人形は、クジラの髭、砂、水銀などが使われているのです。 唯一の例外は、田中久重による次の作品です。「弓曳童子」2点と「文字書き」1点。材料に真鍮が使われています。時は幕末でしたが、日本と欧州の技術交流があった証と言えるでしょう。 MOLEN