「鑑定士と顔のない依頼人」という映画をご覧になったことはあるだろうか?「ニュー・シネマ・パラダイス」「海の上のピアニスト」の名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品で、ジェフリー・ラッシュを主演を見事に演じている。
この映画を観るにあたっては、映画の筋書きと主人公バージルを演じるジェフリー・ラッシュが素晴らしいので、特段の知識を必要としないものの映画の伏線となっているジャック・ヴォーカンソン(Jacques Vaucanson)について少々知っておくだけでこの映画に対する見方が一変するだろう。ジャック・ヴォーカンソンオートマタと自動織機の製作で知られている天才である。
まず冒頭でバージルがレストランで手袋をしたままでナイフとフォークを見事井に操り食事を摂るシーンが印象的だし、自宅にはさまざまな手袋のコレクターズ・ウォール(のようなもの)があり、手袋が何かのメッセージを送っているように思える。
個人的な感想ではあるが、それはジャック・ヴォーカンソンが手袋職人の子どもとして生まれたことを暗示しているように思える。ネタバレになってしまうのだが、主人公のバージルは、手袋コレクションの壁裏に秘密の部屋を持ち、そこには女性を描いた絵画ばかりをコレクションしていた。しかし、手の込んだ詐欺グループによってそれは盗み出されてしまう。 ヴァーカンソンは、1738年後半に彼の最高傑作とされる「消化するアヒル」を製作している。400点の可動部品で構成され、羽ばたくことができ、水を飲み、穀物をついばんで消化し、排泄することができたと伝えられている。 アヒルは確かに消化を正確に実演してみせたが、実は「消化済みの食物」を格納した小部屋が内部にあり、アヒルが食べた穀物を消化して排泄したわけではなかった。そのような「詐欺行為」は時折問題とされているらしいのだが、それがこの映画の大きな骨子を担っているに違いないと私は推理している。
因みに、映画の重要な小道具としてフェイクではあるが見事にゼンマイ仕掛けで動く人形=オートマタが登場するが、これはRob HiggsとKeith Newsteadによって制作された。 https://www.youtube.com/watch?v=tZVEfFe_MME