機構模型というあまり耳慣れない単語ではありますが、それをキーワードにネットで検索をしますと、いろいろ出てまいります。その中の片隅に、モーレンの名があるわけですが、在庫を持たず受注生産のため製作に時間がかかり、気の短いお客様の期待にお応えできない場合もままあります。 それでも「他で頼んだが、うまく作動しなかったので、やはりモーレンで」などと嬉しいというか少し複雑なお知らせとご要望をいただくことが多くなったように思います。機構模型はその機能をキチンと果たして初めて価値があるわけですから、満足に動かないのでは、ほとんど意味がありません。 餅は餅屋ではないのですが、20年以上こうしたことをやっていると、こと機構模型にだけ関して言えば、その専門性は確実に経験が功を奏しているように感じています。素材の選び方、量販店で購入できるような木材は使用していないとか、回転部分に必要以上に負荷をかけないとか諸々です。
これは機構模型に特化して言えることなのですが、「イギリスからくり玩具展」のような全国の美術、博物、科学館で期間中に数千人、数万人の来館者に触れられ、時にはひどく乱暴に扱われたため故障することが多い時期(時代)がありました。故に絶対に故障しないことを強く意識して改善を重ねてきたわけです。
来館者がどのような角度で、どの程度の力で、どのような回転速度でハンドルを回すのか?その様子をつぶさに見てきた経験は、他にはない得難いものとなっています。ある日、どう考えても、故障しない部分がポッキリと折れていたことがあります。会場の方にお聞きしたところ、どうやらある種の工作道具(マイナスドライバーのようなモノ)を持ち込み、テコの原理を利用したらしいということがわかってきました。
少し話がそれます。「お客様は神様です」という言葉が曲解されてから久しいわけのですが、現在の展覧会は、学芸課や展示係の皆さまが乱暴なお子さまに注意しにくい環境が存在することをご存知でしょうか?触ってはいけない、立ち入ってはいけない、どころか破壊行為、ひどいものでは盗難すらあるわけですが、目撃した会場係員が注意をすると、同行する親や祖父祖母の方が、「どうしてうちの子だけを云々」と言われるケースが増えているように感じます。
個人的な感想ですが、少なくとも公設の美術・博物・科学館では、展示物から何かしらの学びを得るだけではなく、そこにお金と時間を費やしてやってこられた他の方々や、その展覧会のために大変な努力をしてきた関係者等々とのコミュニケーションがあるわけですから、それを損なうことへの行動は許されるものではありません。先に触れましたが、マナーなどというレベルではなく犯罪と呼ばれてもおかしくないことがある点に、私たちは注意を向ける必要を感じます。
公的施設でやりたい放題やっても、何も言われない。何か言われても親や祖父祖母が庇っておしまい。
それは、そのお子さんにとって無益どころが害になり得ないからです。せかっく博物館に来てまで、犯罪を生み出す温床のような役目を果たすようなことに、すくなくとも私自身は加担するような環境を止めようと思い、機構模型の改善に本気で乗り出したという背景がここにあります。
大変、長くなりましたが、決して独りよがりとか、弊社の模型だけが優れているのだというPRということでないつもりで書かせていただきました。私のような立場の人間が、このような生意気を申し述べるべきではありませんが、あえて書かせていただきました。