オートマタは上体がフィギアでその下に、機構を収めた箱の二つから成り立つことが多い。嬉しいことに、鈴木完吾氏の「書き時計」のようにその範疇からはみ出し、新しい発想と方向性を持ったものも近年出ているのだが、ここではオーソドックスなオートマタに限り話を進めてみたい。
ご覧の図は、写真集「ポール・スプーナーの世界」にも掲載されているので、ご覧になられて方も少なくないと思う。作者自身による作品完成前に描かれたイメージスケッチである。
よく見ると前出の“機構の箱”から飛び出した、シャフトの長さや太さの数値が書き込まれている。
何故このような数値が書き込まれる必要があったのだろうか?
答えは簡単で、弊社のリクエストに応えたものだ。どういう意味?では、詳しくお話しを進めて参りましょう。弊社は展覧会では日本製のモーターを使い「スイッチを押している間オートマタが動く」仕組みを採用している。
その前に、オートマタをアクリルガラスケースに入れる。狼藉を働く不埒な輩から守るためである。そのアクリルガラスに囲まれたオートマタの下に駆動ベルトを回転させるためのモーターを忍ばせているのだが、駆動ベルトの太さが3種類(うち2種類は弊社のために三ツ星ベルトさんがオリジナルで製作してくださったもの)あって、プーリーもそのいずれかに当てはまるモノを用意しているが、作品によっては、弊社の基準に該当しない、微妙な太さ(細さ)のものもある。日本と英国の工業技術基準の違いをひしと感じる瞬間でもある。 そのためモーターを組み込む際に、余計な手間を省くことを目的に=事前の確認のために、このスケッチは描かれたというわけである。