ポール・スプーナーをはじめとする、イギリス現代オートマタ作家が紡ぎだす、ユーモア―とちょっとしたアイロニーな作品群。昨年12月-今年1月にかけて行われた、八王子市夢美術館での展覧会をきかっけとして、少しづつ認知されているように感じます。 現在、ここ長野県山ノ内町にある”志賀高原ロマン美術館”で開催中の「イギリスからくりおもちゃ展」には、前述の八王子市夢美術館での展覧会を、ご覧いただいたお客様=リピーターの姿も多く見受けられる他、今年夏に開催された上越科学館の「カラクリ人形ととびだす絵本のワンダーランド展」でオートマタを知った方々もリピーターとして訪れていただいています。 長年、この英国現代オートマタの日本国内での認知度をあげることを目標に努力してきたことが少しづつではありますが、カタチになって表れてきたようなのです。遠方からお越しいただきました皆様には心から御礼申し上げたいと思います。 本展覧会は、黒川紀章氏が設計した会場との相性も良く、お運びいただいた老若男女問わず楽しんでいただいています。簡単に言えば「楽しむ」ということに尽きるわけですが、もう少し踏み込んで言えば、リラックスできる空間づくりができたと思うのです。 そのベースは、もちろん作品の造形力にあるのですが、展示会場の空間を生かしMOLENがいつものように会場に持ち込む専用什器類(照明機器、バックパネル=作品の後ろに建てられた壁)と、作品の性格別に計算した演出にあります。 そこに至るには、さまざまな偶然が重なったことがありますが、ここにきて”イギリス現代オートマタ”をどう表現するか?の糸口が私自身にようやく見え始めているのかもしれません。 この心境に至るまでに17年もかかりましたから「遅すぎた」という反省をしなければならないでしょう。
*会場写真(上)は、本展覧会で大変お世話になった志賀高原ロマン美術館キュレーターである鈴木様からお借りしたものです。アヌビス作品だけを集めた展示室です。