河豚(Fugu)と名付けられた作品には1枚の”添書き”が貼られており、 次のように書かれています。

「More death result from smoking fish than from eating them.」
「魚の燻製は健康へ与えるリスクが高い。」と読み取れます...だいぶ意訳しましたが。 「喫煙者は、健康被害へのリスクが高いことを知っていてもタバコを吸う」こと。 smoking とsmokedの言葉を掛けて書いた...その可能性も感じます。
ポール・スプーナーが、この作品を作ったばかりの頃、作者と会う機会があり、河豚(Fugu)という作品は、日本人に向けて作ったものではないことを聞きました。

どちらかと言えば、イギリス人へ向けたあるメッセージが秘められています。 あるメッセージとは... イギリス人は、kipper(キッパー)と呼ばれる、ニシンの薫製を時折(人によってはしばしば)食べるようです。kipperは、生産コスト削減のために近年は、着色材を用いて作られる傾向があるようです。 着色剤を使った薫製には毒性があり、健康被害が懸念されているとも聞きます。
それはややオレンジを帯びた黄色っぽい色をしており、慣れないと見た目、かなり毒々しい感じを受けます。その毒々しさは、この作品の河豚の姿に重なります。そもそもこのようなオレンジ色をした河豚を私たちは知りません。
「河豚が毒を持つことを知りつつ、あえて食する食文化」がとても奇異にみえる。 イギリス人から見ると至極当然なのでしょうが、
彼らも、毒性のある着色されたニシンの薫製を食べているのですから、他人のことをとやかく言えないのでは?という痛烈な皮肉がこの作品に込められているというわけです。